絶対の予言のように

道を違えてしまう。
どれ程、手を繋ぎあっても。
道を違えてしまう。

宿命のように。
呪いのように。
約束事みたいに、道を違えてしまう。

対面[聖域設定]

――こんにちは。

ソレは言った。
無邪気な笑顔で。

――それとも、はじめましてで久しぶり?

首を傾げて聞いてくる。
なんと言えばいいだろう。
やっと会えた。
望んでいた。
触れたかった。

――オレのことが分からない?

不安げに聞くので急いで首を横に振れば、花咲くような笑顔があった。
そして、私は無邪気な悪魔と握手を交わした。
どこか飛んで行ってしまいそうな半身を繋ぎ止めたくて、
握った手はしばらく離せなかった。

幸せなので、まどろみに浸りたいのです。

「おはよう」

そう君が笑顔で言うから、二度寝を決行した。
起きた時、死ぬほど怒られた。

サガ

許せなかった。
許せるはずもない。

自分のものなのに。
自分の半身なのに。
どうして自分の意に反する。

右手が左手と仲違いする?
しないだろう。
だから、正しい私の言葉を聞くべきなのに。
何故こんな簡単なことが理解できないのだろう。

許せない。
罪には罰を。
過ちには贖罪を。
それでも、まだ足りない。

それは同じ者ではないという証[冥界設定]

蒼くて。
あまりにも蒼かったので許せなかった。

もし、自分と同じもの。
いや、もっと似ていたのならちゃんと優しくしてあげた。
縛らないと逃げてしまう。
触れていないと消えてしまう。

そんなことは、蒼いことよりも許せない。
ずっと一緒に居る。
約束は絶対。

でも、蒼くて。
その蒼さは二人を引き離す。

君が救われる日を夢見て[冥界設定]アイオロス

君に世界をあげられれば良かったんだけど。
上手くいかない。

「できないから、諦めるのは違うと思う」
自分の言葉だったのに。
遠すぎて。

冷たい眼差し。痛んでいく心を感じて悲しくて。
無機物のような。心が在るはずなのに感じさせない。
そんなこと出来るはずがないのに、やってのけてしまった。

君が君としていられる場所にいつか出会えればいい。
そう思い続ける。

名前も知らない君に……[冥界設定]アイオロス

ネジくれてイビツで、だから手を差し伸べ続けた。
いくらだって手を貸そう。
君が歪まないで済むのなら。
君が痛まずに生きられるのなら。

サガ[冥界:現在]

「さようなら、兄さん」

能面のような顔で最愛の弟が言った。
理解できない言葉だった。
発せられるはずのない言葉だった。

海界におりた

零れていく記憶。
弾む吐息。
終わらない罵倒。
あるいは悲痛な悲鳴。

波音。
ふやける皮膚。
死の感覚。
黒と青。
白と蒼。

ガラガラと崩れる音に。思うんだ。
――あぁ、やっと生きられる。まだ、生きていける。

それが答えだった。

君が居ればいいと言ったら、
君が居ればいいと返してくれた。

もう少しだけ一緒に居てと言ったら、
ずっと一緒だよと言った。

もう要らないかとたずねたら、
何も言わずに黙ってしまった。

それは箍が外れたように[冥界設定]

あぁ、やっと安心できる。
操り人形の糸が切れた。
虚無に身を浸すことはない。
人形師を気にしなくて良いのだから。

笑って生きていこう。
全てが帰ってきたのだから。
心も身体もどこまで自由。
糸はもうないのだから。
勝手に歩いても怒られない。

ならばどうしてこんなに虚しいのか……。

罪悪感など感じない。
罪などないから。

消えていく偽りの仲間達。
悼むことはできない。
そんな資格はないのだから。

下される言葉。
裁きではなく投げられた。
もういいと切り捨てられたのだ。
それすら、関係などないはずで。
悲しまなくていいというのに、心は……。

何一つ、関係などなかった。
彼らはまったく関係がなく巻き込まれた。
知っていながら、触れていた。
何一つ、真実は語らなかった。
偽りならば当然。
事実など現実だけ。
語るものは持ち合わせていない。

悲しむべきことも。
悔いるべきことも。
何一つないはずで……。

カノン[冥界設定]

目隠し。
世界は閉じていた。
手錠。
何もつかめない証。
縄。
心すら縛るためのもの。
触れる体温。
精神に刺さる棘。
ささやかれる言葉。
嘘であったのなら救われた。

ただ、声を大にして君の名を呼べる世界が欲しい。

カノン

それは居ない者の名前。

カノン

それは存在しない名前。

カノン

誰でもない半身の名前。

カノン

もう永久に呼ばれる機会を失った名前。


それでも、君の名を呼び続けたいと。
それでも、君の存在を愛し続けたいと。

カノン

カノン

カノン

宿命というもの

回る回る。
それはまるで運命のように。

巡り続けて流転する。

どこまでが自分で。
どこからが誰かか。
命運と痛み。
真実と刷り込み。

旅の終わりは何処と定める?


2006/02/26