君が選んだ未来を見てみたいと、青年になった少年は片割れに言った。
世界から見捨てられた少年は、 世界を見限ることを決めた。 全てを見失った少年は、 大切なものをとりこぼし続けた。 そして、二人の道は分岐する。 こうして、運命は枝分かれしたのだ。 一人で立つ君は強い。けれども……。
カノンは運命を信じない。 カノンはもしもを願わない。 カノンは夢想には浸らない。 カノンはただ現実を歩んでいく。 でも、何かに支えてもらいたいと誰だって思うだろう。 支えてあげたいと思ってしまうだろう。 カノンとアイオロス[海界設定]
――まるで、残骸の中で生きているよう。 その言葉を覚えている。 そういった顔も瞳に焼きついている。 その後の出来事も心に刻まれている。 彼が残骸といったのは、それほどまでにここが壊れてしまったから。 生きているといったのは、まだ鼓動が止まっていないから。 別に、もういらないのに、とあの時、確かに言っていた。 恋愛観は人それぞれ。だけど、これから君と共に。
恋と呼ぶには語弊があって。 愛と呼ぶのは間違いじゃない。 観察とは違う興味もあった。 はっきりとしたこと以外は口には出せない。 人がそれをなんと呼ぶのか。 それがどんな感情なのか。 憐憫ではない。 憎悪ではない。 隷属も望みはしない。 だからといって、遠くへは行って欲しくない。 けれども、近くにいては感情は波立つ。 どうしようもなく心は行き詰まった。 答えは、開き直りで出た。 怜悧に鋭利に真摯に。 加減も際限もなく。 楽ではない道だとしても選んでいこう。 君が必要だと。 隣に居て欲しいと。 吐息を傍で感じたいと。 もし、叶うのならば、祈り続けよう。 人間らしいとこんな自分を受け入れて。 所詮は部外者の叫びなのかもしれない。けれども。
何故、引き裂かれることを選んだ。 何故、手を離すことができた。 どうして温もりを忘れてしまえたって言うんだ! それが歯がゆく。それが当たり前で。
結局、君の痛みは君以外には解らないんだ。 私は弟を殺してしまった。
あぁ、もう……全てが遅い。 その言葉も。 その優しさも。 もう既に手遅れだ。 こうやって、そうやって生きていた
ひとりだった。ひとりだった。 圧倒的にひとりだった。 ふたりだった。ふたりだった。 倒錯性なふたりだった。 孤独だった。孤立だった。 どうしようもないこと。 ひとりはふたり。 ふたりで一人。 孤独は二人。 歪んだ鏡面に映るはなんだ?
ある日、子供は思いつきました。 永遠をものにする方法。 永劫を手に入れる術。 自分達は二人でセットなのではなく、 弟が自分と一つのものなのだと。 コピー、スペア、オルタナティブ。 複写で予備の代替品。 愛すべき自分の愛すべき鏡像。 それがまるまる自分と同じになるのであれば、 壊れない永遠が作られる。 薄く脆いガラス細工が半永久的に保管される。 けれども、実際は予想よりも劣悪。 鏡像は鏡像でもそれは水面に揺れる自分の姿。 波紋が落ちて像はたやすく乱れてしまう。 なんて脆いものだろう。 どれほど儚いものだろう。 全てを放り投げるように研究成果に蓋をした。 改めて自分の姿を鏡に映す。 久しく見ていなかった自分を確認する。 そこに映ったのは――。 唱えてはならない疑問
疲弊していく。 磨耗していく。 ――どうしてここにいるんだっけ? それは、決着の言葉。終わりの言葉。 相反し続ける自分と心。自分の心。
呼ばれる名前を否定したかった。 それは、いつでも。 本当は違うんだって言いたかった。 自分は偽者でしかないと謝りたかった。 否定を大声で、泣くように一人で叫ぶ。 それはなんて日々。 それは残酷な日常。 だから、不愉快な安心を得る。 沈む気分をそれで払拭
疑問はどこまでも深まる。 疑惑はどこにでもあって。 疑念は果てがない。 ――どうしたら抜け出せますか。 そう呟いてみた。 遠く、風が返答するように波を連れてきた。 偶然に笑えもしない。 皮肉なのかと息をつく。 その想いは果てしなく遠い場所に届く日を待って
高い空。 触れることが叶わないと自覚させるための晴天。 まばらな雲は太陽を遮れない。 日差しは地上に、頭上に落ちる。 焼くように。 罰するように。 見破るように。 吹いた風は歌のようだった。 |