けれど、泥沼の底に宝物が沈んでいるかもしれない。
止まらない思いを抱えて歩く。 戻れない。 そんな選択肢ない。 選ばないならない。 知らないならわかれない。 あぁ。 なんて、泥沼。 二人で生きよう
君が忘れた思い出。 私は覚えていた。 私が失ったもの。 君が持っていた。 私達は欠けない。 永遠の環。 切れない割れない終わらない。 愛というものを求めて。
心が軋む感じ。 忘れていれば楽。 目を閉じ、全てをただ隠すだけで済む。 なのに、止まらない心。 いつの間にか、どこかへ向かって走り出した。 崇高な真実はいりません。何が怖かったのでしょう。
人は縋ってしまう。 それが例え見せ掛けの希望でも。 闇の中に光を見つけたら、安堵して駆け寄ってしまうように。 己を騙していく。 偽りこそが真実だと、怠惰な答え。 真実を受け入れるよりも本当のような嘘を受け入れる方が簡単だから。 いつか、全てが壊れる日を知っている。
澄みわたり、届かない空。 地上の海は、深い奈落。 足下の泥を避けずに転ぶ。 身体は泥だらけ。 受身も取れないまま。 汚れることない空を見る。 転がったそのままで。 突然の雨雲に濁っていった。 雨で泥は拭われた。 全てはいつか壊れてしまう。 伝わらないなら響かない。そんな簡単なことすら気付かない。
なんども「ごめんなさい」と繰り返した。 アレは誰に対する謝罪なのか。 自分自身だろうか。 耐え難い眠気、抗いながら生きる日々。
日に日に短くなっていく一日。 一日中眠って過ごすような生活。 電池が切れるように、パッタリとプッツリと。 まるで機械。 電源を入れられると起動する。 ギギと鈍い音を立てて動き出す。 誰彼……逢う魔が時。さて、誰と誰が出会うのか。
黄昏に揺れる想い。 振り返って「誰?」と訊ねられたら、 どう答えればいいだろう。 重いから潰されてしまう。雁字搦めの信仰のように。
思いが愛が呪いみたいで。 下手なのは生き方ではなく歩み方。
私達は距離を測りかねていた。 目測はいつも正しくなかった。 触れられると思った瞬間、遠のいた。 距離を開けた瞬間、ゼロ距離に。 下手だったのは、逝き方ではなく行き方。 どこかの誰かの悲しみを包もう。
痛ましい声を聞く。 嘘に嘘を重ねる。 罪に罪を重ねる。 儚げな声を聞く。 どこかで誰かの優しい声が響く。 波音はどこまでも温かく反響。 悲痛な悲鳴がこだまする。 何度となく繰り返し言える言葉。
君が君になれるのならば、何だってしよう。 君が君を愛せるならば、差し出す物は犠牲ではない。 君が君のままならば、与え続けることは苦痛ではない。 だから、何も気にしなくていいんだ。 あまりにも自分が自分ではないから。
時々私は、自分が生きているという事実を忘れる。 今の今まで、その感情に名前はつけれずにいた。
さみしい、そう思った。 一人、静かな空間で湯気立つコーヒーを見つめる。 意味もなく、他人は煩わしいと感じていた。 無音の空間が好ましいと思っていた。 けれど、ポツリと落ちる静寂。 心地よさから落ち着かなさに変わる。 沈み込むように心細い。 鳴き声。 耳鳴りのように微かなもの。 けれど、確かにある。 心配してくれている自分以外のものがある。 微笑んで海龍を抱き寄せる。 温かなもので満たされる心。 あぁ、さみしかったんだ。 一人と一匹、静かな空間で繋がりを認識する。 一人はコーヒーを飲み、一匹はただ傍らに居る。 静寂はそれだけで儚く破れてしまった。 君との日々。
たとえば、澄み切った空。 その下で麦藁帽子の君。 揺れるライ麦畑を思わせる君の髪。 それに触れた時の君の反応とほのかに吹く風。 あたたかな感覚。 やわらかな空気。 透明な君の声。 忘れがたい日溜まり。 |